· 

CASE30−3 産んだ感じがしない

帝王切開のその日は予定日ちょうどでした。

 

今まで大きな病気もせずにきたので、

 

全身麻酔のような手術は初めてでした。

 

手術室に初めて入った感想は

 

「怖い」

 

でした。

 

無機質だし、

 

冷たいし、

 

台が硬いし、

 

台所の板の上みたいと思いました。

 

手術室に入ってからはもうベルトコンベア的な感じで処置が進み、

 

指示されるままに動いて、

 

深く考えることはあまりありませんでした。

 

麻酔を入れる前が一番怖かったです。

 

当時は硬膜外麻酔のリスクすら知らなかったので、

 

リスクが怖かったわけではなくて、

 

針を刺される、

 

薬を入れられるということが怖かったです。

 

麻酔が入ってからは、

 

痛くもないし、

 

ボーッとしていたし、

 

怖くはありませんでした。

 

 

主人は手術室には入れず、

 

外で待っていました。

 

赤ちゃんが出てくるまで、

 

何も考える余裕も無く、

 

考えようともせず、

 

2日間眠れていないから早く無事に出てきて欲しいなぁ、

 

早く終わって欲しいなぁということしか考えていませんでした。

 

出産ってこんなものなのかなと思っていました。

 

出てきた瞬間は感覚も無いし、

 

「出てきたんだな、ふ〜ん。」

 

とちょっと他人事みたいな感覚でした。

 

赤ちゃんの声が聞こえて、

 

「手を握りましょう。」

 

と言われた時に、

 

「あ!良かった、出てきたんだ。かわいいなぁ。」

 

と思いました。

 

自分が産んだんだという感じではなくて、

 

医療者に全部やってもらった感、

 

そういうサービスを受けたという意識でした。