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CASE35−10 陣痛中に耐えられなかったこと

私もいろいろ頑張っているさなか、

 

夫が近くで

 

「You can do it!」

 

と言ってくれるのですが、

 

その口の匂いに耐えられなくて、

 

「Your smell!」

 

と夫にブチギレてしまいました。

 

助産師さんが気を利かせて夫に

 

「あなたに倒れられても困るから、

 

あなたはここに座ってて。」

 

と夫を離してくれました。

 

入院が夜の7時だったので、

 

その時点で深夜を過ぎていたと思います。

 

夫も体力的に疲れていたので結果的に良かったと思います。

 

そこから鉄棒みたいな棒が出てきました。

 

その棒を持って、

 

いきむように言われました。

 

そんな時に頭に浮かんだのは

 

「陰部が切れたら嫌だな。」

 

ということでした。

 

案外あの場では、

 

私が一番冷静で、

 

あの状況がめちゃくちゃ面白いとさえ感じていました。

 

みんながあまりにも必死になってくれているので、

 

私も必死になっているフリをしました。

 

 

一番気になったのは、

 

私がハイリスクで

 

Rh(-)の感作ができている子が生まれてくるのが珍しかったのでしょう。

 

小児科やら研修生やら、

 

とんでもない数の医療者が私の部屋に来て、

 

私を見ているというより、

 

どんな子が生まれてくるんだと楽しみにしているような雰囲気でした。

 

私も早く生まれるようにといきみを頑張りましたが、

 

赤ちゃんが出てくることはなく、

 

私自身が発熱し始めました。

 

解熱剤を使って少し落ち着いてきた頃、

 

さすがに子宮口が10cmにはなっていたと思うところで、

 

またいきみ始めました。

 

それでも出てこないので、

 

「赤ちゃんの頭を掴んで出す鉗子分娩にしようか?

 

赤ちゃんの頭が少し長くなるけど良いか?」

 

と医師に提案されました。

 

「長くなっても良いから、

 

出してくれ。」

 

と言い、

 

鉗子分娩を試みたのですが、

 

それでも出てきませんでした。

 

医師たちはきっと大変だったんだろうけど、

 

私は何も大変ではありませんでした。

 

そして、

 

これ以上鉗子で引っ張るのは危険だから、

 

鉗子は止めて、

 

いきみを続けようとなりました。

 

そうこうしていると、

 

子どもの心拍数が異常に上がり、

 

「帝王切開にしましょう。」

 

と言われたのです。

 

「ほらね、

 

やっぱり切るじゃん。

 

ねっ?

 

言ったじゃん。」

 

と心の中で思いました。

 

ドゥーラは

 

「私は手術室には入れないから待ってるね。」

 

と言ってくれたのですが、

 

夫が

 

「もう大丈夫だから、

 

赤ちゃんが生まれたらきっと彼女も疲れてるだろうし、

 

もう帰ってくれていいですよ。」

 

と言い、

 

家に帰したそうです。