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CASE35−11 それ、今聞くの?

手術室に入って、

 

仰向けで寝ていると、

 

仕切り越しに医師たちが見えました。

 

だんだんと麻酔の影響で気持ち悪くなってきました。

 

とにかく気持ち悪いから吐きたいと伝えました。

 

「ちょっと待って。

 

バケツを持ってくるから。」

 

と言われたけれど

 

「ダメ、

 

待てない。」

 

とバケツが無い状態で吐きました。

 

すごく気持ち悪いのに、

 

一方では点滴が入らないと医療者たちが騒いでいました。

 

何回も針を刺してくるのでとても痛かったです。

 

ようやく点滴が入ったところで、

 

別の医師がやってきて、

 

「今後の研究のために、

 

胎盤をくれないか?」

 

という説明を始めました。

 

私は気持ちが悪かったし、

 

「そんなことどうでもいい。

 

好きにしてくれたらいい。

 

あげる、

 

あげる!」

 

と言ったのですが、

 

「ここにサインをしてくれ。」

 

とお願いされたのです。

 

気持ち悪くて吐いている上に、

 

点滴で手が曲げられない状態で、

 

どうやってサインするの?

 

という状況でした。

 

妊娠中にも同意書を取る機会はあったはずなのに、

 

私の判断能力がグラグラなこんな状況でお願いしてくるなんて

 

本当に私の胎盤が欲しいんだなと思いました。

 

吐き終わって少しすっきりすると、

 

赤ちゃんが無事に産まれたようでした。

 

「赤ちゃんに会う?」

 

と聞かれましたが、

 

赤ちゃんを一度キレイにしてから会わせて欲しいと頼みました。

 

赤ちゃんをキレイにしている間、

 

夫は赤ちゃんを見に行ったようです。

 

赤ちゃんを見て、

 

私のところに戻ってくる際、

 

夫は私の内蔵を見てしまったようで、

 

顔面蒼白になってました。

 

ようやく子どもがキレイになり、

 

「抱っこする?」

 

と聞いてくれたのですが、

 

手が固定されていて抱っこなんてできやしないと思い、

 

断ると、

 

「せめて写真だけでも、

 

記念に。」

 

と言われました。

 

夫と子どもだけ撮ってくれれば良いからと言っても、

 

まぁまぁと言われ、

 

撮られた写真の私は怒っているようでした。