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CASE35−8 ドゥーラの存在

案の定、

 

誘発剤が始まると、

 

びっくりするほど痛くて、

 

「こんなに痛いなんて聞いてない。

 

めちゃくちゃ痛いじゃん。」

 

と思いました。

 

ずーっと

 

「麻酔科医を呼んでくれ、

 

早く麻酔を入れてくれ。」

 

と言い続けました。

 

すると、

 

「今、麻酔科医はすぐには来れない。

 

他の手術に入っていて、

 

手が離せない状態だ。」

 

と言われたのです。

 

私、

 

結構前から言ってたじゃん!

 

バックアップ用意しておいてよ!

 

と思いました。

 

そこで提案されたのが笑気ガスでした。

 

なんでも良いからどうにかしてと思っていたので、

 

笑気ガスを試しました。

 

「ずーっと吸ってはいけないよ。」

 

と言われたのですが、

 

痛すぎてずーっと吸っていました。

 

夫も私に声をかけてくれていたのですが、

 

痛すぎて、

 

もうその声すら聞こえなくなっていました。

 

私が

 

「うるさい!黙って!!」

 

などと言っている間に、

 

夫は契約していたドゥーラを病院に呼んでくれました。

 

ドゥーラが病室に入ってくるやいなやの第一声は

 

「どうして彼女は泣いているの?」

 

でした。

 

 

もう痛すぎて、

 

自然と涙が溢れてきていたようです。

 

すると彼女は笑気ガスをずっと吸っているのは良くないから離しなさいと言い、

 

私は

 

「嫌だ。

 

絶対に笑気ガスは手放さない。

 

嫌だ、

 

嫌だ。」

 

の押し問答でしたが、

 

ドゥーラが

 

「大丈夫。

 

私が痛みを逃してあげるから。」

 

と言ってくれました。

 

胎児モニターを見ながら、

 

陣痛が来るタイミングで、

 

立たされて呼吸を促されました。

 

こんなことするなら帰って欲しいと最初こそ思いましたが、

 

そのおかげで笑気ガスが無くても痛みをやり過ごすことができるようになりました。

 

ドゥーラは本当に痒いところに手が届くような存在でした。

 

ヘアゴムなんかも持ってきてくれていて、

 

私の髪が乱れれば、

 

それをまとめてくれ、

 

唇が乾燥してくるからと陣痛のたびにリップを塗ってくれ、

 

夫では絶対に気が付かないような細かいところまで私のことをケアをしてくれました。