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CASE38−6 与えられた選択肢

麻酔を担当してくれたのは

 

新人さんのような人でした。

 

経験のあるベテランの医師が横について、

 

新人さんなのか学生さんなのか分からないその人に口頭で指示をして、

 

指導していました。

 

その人はなかなか私に麻酔を入れられませんでした。

 

それに私も怒ってしまいました。

 

「もう学生さんは止めてくれ!」

 

と怒って何度も伝えるのですが、

 

止めてくれず、

 

看護師が

 

「あなたはよくやってるわよ、

 

大丈夫。

 

子どももちゃんと大丈夫だから、

 

あと少しよ。」

 

と声をかけてくれるばかりでした。

 

「いやいや、

 

私じゃなくてこの新人さんか学生さんをどうにかしてよ。

 

もう何回か挑戦したんだからいいでしょ!?」

 

と苛立ちました。

 

麻酔が入り、

 

痛みも取れたところで、

 

医師から今何が起こっているかの説明がありました。

 

「胎盤がずれて外に出てきている。

 

まだ(子宮口が)2cmしか開いていないけど、

 

自然分娩で産みたいと言うならそれもあなたのチョイスだけれど、

 

もうここの手術室からは出られないわよ。

 

何かあった時には緊急手術になるから、

 

部屋に戻ってと悠長なことはやっていられない。

 

部屋に戻るか、

 

もうここで帝王切開で産むか。」

 

と言われました。

 

 

この時点で私としては壮絶な体験をしていると感じていました。

 

そこまでして自然分娩にこだわっているわけではないし、

 

赤ちゃんの心拍低下もこれからも出現する、

 

赤ちゃんも危険だよとも言われました。

 

一応チョイスは与えてくれたけれど、

 

私が決めないと医療者は動けないんだろうなと感じました。

 

何かあった時に訴えられたら困るから、

 

選択肢は与えたよという感じでしたが、

 

言い方は

 

「まだ2cmよ?

 

あと8cmも待たないといけないんだからね?

 

もう帝王切開しかないよ?」

 

という感じでした。

 

そして、

 

また内診をしなきゃいけないのかということも恐怖でした。

 

1回目の内診以来、

 

「内診するよ」

 

といわれるだけで、

 

体が震えるくらい恐怖だったのです。

 

元々痛みには強いほうだと思っていたのですが、

 

内診されると少しの間、

 

涙を止められず、

 

泣き続けるくらい痛いと感じました。

 

それもあって

 

「帝王切開でお願いします。」

 

と伝えました。

 

「分かりました。

 

では帝王切開にしましょう。」

 

ということになりました。