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CASE39−5 誰がへその緒を切るか

幸いにも赤ちゃんはすぐに産まれてきてくれて、

 

カンガルーケアもしました。

 

帝王切開の場合はお腹を切られている為、

 

感染症予防の観点から

 

執刀医以外はへその緒を切ることはできないと

 

事前に説明を受けていました。

 

父の仕事の関係で

 

私はアメリカで産まれ日本で育ったのですが、

 

父は子育てに参加しない古いタイプの人だったにも関わらず、

 

事あるごとに

 

「へその緒を切ったのは自分」

 

と自慢をしていました。

 

妊娠や出産、

 

子育てで大変な思いをしたのは母だったのにな

 

と常々思っていたので、

 

昔からもし自分が出産する事があったら、

 

へその緒は自分で切れたらいいなと考えていた為、

 

その点に関しては少し残念でした。

 

 

赤ちゃんが出てきた瞬間は

 

ビックリという感情が一番でした。

 

胎盤の位置によって

 

胎動もあまり感じられなかったので、

 

妊娠中、

 

赤ちゃんがお腹の中にいたという感覚があまり無かったのと、

 

長い間、

 

生理不順に悩み不妊治療をしてきて、

 

本当に赤ちゃんを授かることができるのかどうか

 

分からないと思っていたので、

 

自分の体からひとが出てきたということに驚いたのです。

 

 

 

医師が赤ちゃんを取り上げた瞬間は、

 

「手も足も長い!

 

想像していた赤ちゃんのイメージと違う!」

 

と思いましたが、

 

顔を見たら夫の祖母とすごくそっくりで、

 

体型も周りの看護師さんたちが

 

「今まで見た赤ちゃんの中で一番手足が長いわ。」

 

と言い、

 

看護師さん達が夫を見た瞬間に

 

「あら、これは遺伝ね!」

 

と盛り上がっていました。

 

私はそんなことよりも、

 

健康なの?

 

心臓はちゃんと動いてるの?

 

産まれないと分からない障害もあるけど、

 

それはどうなの?

 

ということが気になっていました。

 

みんながあまりにも騒いでいたので、

 

はじめは異常があったのかと思っていたけど、

 

そうでないなら良かったとホッとしました。

 

夫は泣いていました。

 

普段はとても冷静な人なのですが、

 

彼は感動したようです。

 

ビデオや写真をたくさん撮ってくれていました。

 

私は手術後も全身麻酔に切り替えずに、

 

そのまま意識がある状態でした。